中国で盛り上がる日本語学習熱を ビジネスチャンスに変える方法とは ~中国現地で見てきた日本語教育事情の情報大公開~ ウェビナー特別回レポート

9月14日(水)Linc主催ウェビナー【Lincウェビナー特別回:中国で盛り上がる日本語学習熱をビジネスチャンスに変える方法とは 〜中国現地で見てきた日本語教育事情の情報大公開〜 】を開催いたしました。

今回は、日頃お付き合いのある日本語学校の先生方、完全オンラインにて合計42名の方にご参加いただき、先日、中国ハルビン出張から帰国した、株式会社Linc、法人営業責任者の斉 宇(さい う)氏が登壇しました。

ー背景、目的及び期待ー

■背景

・先日8月29日に発表された「留学生30万人計画」の見直しに関して、現時点で在日の留学生28万人前後を、2025年に向けて年間30万人以上の受け入れを目指す日本政府の指示

・東南アジアの学生の交付率が低いまま、日本語学校の定員を埋めていくために、中国より募集状況を改善したい

■目的

・中国の日本語学習事情を知ってもらい、今後の学生募集に役立つ情報を共有すること

・日本語学校の人的リソースを中国で最大限に活用できる方法を考えさせられること

 

ー中国ハルビン市の概要ー

・中国東北部に位置する二線都市、北海道北部と同じ緯度の為、冬はマイナス30度を下回る

※中国では、商業的な資源の集約度やハブとして機能性、市民の活発さ、ライフスタイルの多様性、将来性などいくつかの指標から、337都市を「一線都市」「新一線都市」「二線都市」「三線都市」「四線都市」「五線都市」の6つのランクに分けています。

ー今回の滞在期間及び訪問した学校・機関とそれらの課題ー

・中国滞在期間:8月4日~9月1日

・隔離期間:8月4日~14日(10日間)

・ハルビンでの活動期間:15日~29日(14日間)

・出張期間中に計12社に訪問(大学・高校・日本語教室・仲介)

・学生及び保護者との面談(17名)

 

ー中国ハルビン出張で収集した現地が抱えている課題ー

(詳細は下記参照)

■大学

・コロナの影響により、現地在住していた日本人の先生方が帰国のため、現地で直接教えられる先生の人手不足

・中国現地大学の先生方からのヒアリング:

大学生が日本語学科を卒業したとしても、身につけた日本語スキルがほとんど活用できず、不動産業やUber Eatsのような宅配業に従事せざるを得ないことが多い、非常にもったいない

・日本人との交流がないことによって、ネット上の不確かな情報に頼る他なく、学生が本当の情報をキャッチできる機会が少ない

■高校

・日本語をしっかりと教えられる先生が少ない

・日本語を活用できる場が少ない、読み書きのような机の上での学習に偏ってしまっている現状がある

・日本語は教えられるが、日本への留学情報の提供が手薄になってしまっている現状がある

■日本語教室

・日本で例えると語学センターのような存在

・コロナの影響で日本語教室が行政で閉められる

・ロックダウンで学生募集が厳しい

■仲介

・欧米への学生の送り込みが難しくなってきたことから、これから日本留学をどんどん拡大していきたい考え

■保護者

・子供が日本留学に関する正確な情報が得られず不安がっている

 

ー具体的な訪問校ー

①黒竜江大学(こくりゅうこう)

・学部生と院生を合わせ計550名が日本語を学習している

・日本語教師の定員は3名だが、現状は2名の日本語教師しか在籍していない

・オンライン授業の為、授業以外は教師と学生のコミュニケーションが取れない状況になっている

 

②ハルビン理工大学

・総合系の大学

・専攻学部生と第二外国語選択としての計500名が日本語を学習している

 

③黒竜江外国語学院

・今回訪問した中で、最も日本語学習者数が多い。計1700名

・定員に対して、在籍講師の数が少ない

・講師の平均年齢が60歳を超えている

・学院長の方から、新しい講師を募集したいとの旨をいただいた

・現在学校の方針としてITを専攻する学生に、プラスで日本語も学習させる。これは日本でのIT人材不足を解決しながら、学生の就職先を一緒に見つけていくという学校の考えがある

 

④崑崙(こんろん)旅行学院

・比較的最近開講した中国私立大学

・卒業後の就職率(院への進学・海外留学含む)に力を入れていて、中国国外へ羽ばたく人材育成に重きを置いている

・旅行学院であるので、日本のホテルにて自校の学生をインターンさせる試みを実施していたが、コロナの影響でできなくなってしまったので、今後再開していきたい

 

ー以上4つの大学のまとめー

日本語学校が掴むべきチャンス①大学に向けての活動

■大学の課題

・日本語学科の卒業生の進路がよくない

→日本語学科を卒業しても就職先が見つからず、不動産の売買やUberのような宅配員をせざる負えない生徒もいる

→日本語講師養成講座を現地大学の先生と学生に紹介したところ、とても興味を持っていた

・日本の進学、就職、生活の情報が乏しい

→遠隔地に居ながらの、個人での情報収集には限度があるので、日本語学校がライブ配信を通じ、日本人先生のリソースを活用しながら、定期的に発信していければ今後の学生募集につながっていくのではないか

★今回訪問した4大学中3大学からぜひ日本人講師を紹介してほしいとの要望が来ている

⑥ハルビン順邁(じゅんまい)学校高校部

・先生方から、いろんな日本語学校とも提携してみたいとの声をいただいた

・日本語でコミュニケーションを国際部の学生に取らせたいという狙いがある

 

⑦ハルビン新区現代高校

・新しい開校した高校、現在約400名の1年生が在籍

・2023年度は追加で100名日本語科目(大学受験目的)学生の募集計画あり

・グローバル化推進の需要があり、海外の高校と交流会をやりたい

 

ー以上高校のまとめー

日本語学校が掴むべきチャンス②高校に向けての活動

・日本の進学、留学、生活の情報が乏しい

→遠隔地に居ながらの、個人での情報収集には限度があるので、日本語学校がライブ配信を通じ、日本人先生のリソースを活用しながら、定期的に発信していければ今後の学生募集につながっていくのではないか

 

⑨揚格(ようかく)外語学校

 ⑩莱特(らいとく)外語学校

・読み書きを習得した学習者に対し、会話の機会を与えていきたい

 

⑪翔碩(しょうたく)留学

⑫知之(ちの)留学 、⑬達利通(たつりとう)留学

・中米関係の影響で欧米に留学が難しくなってきた為、日本留学にも挑戦していく考え

 

ー以上2つの日本語教室と3つの仲介のまとめー

日本語学校が掴むべきチャンス③仲介、日本語教室に向けての活動

■日本語学校の課題

・ほとんどの学生は仲介を通して在籍に至る

・ 趣味として日本語を学習している生徒は短期間でやめてしまうことが多く、長期的な収益につながっていない

 

⑭保護者・学生(合計17名)の面談・食事会

既にお子さんが日本留学をされている保護者・これから日本留学を検討している保護者の両方にヒアリングを行った

ー以上保護者・学生(合計17名)の面談・食事会のまとめー

 

日本語学校が掴むべきチャンス④保護者に向けての活動

・同じ日本に留学している保護者コミュニティーがない

 

直接募集→在籍学生の保護者から直接新規学生を紹介してもらう

 

まとめ

■日本語教師が中国国内で働くことが、日本留学促進のきっかけになる

大学や高校は他校との差別化を図るため外国人講師を雇用したい願望が強く、日本語学校がこのチャンスを掴み、現地の学生と長い期間学習、生活をしていくことで日本文化や進学、就職等の事情を伝えることができ、今後の日本留学へ促す絶好なチャンスとして考えています。

 

■今回見てきたハルビンといった二線・三線都市に学生募集のチャンスがある

二線都市は、一線・新一線都市には劣るものの潜在的な消費能力を秘めていますが、住民の世代によって、消費の価値観が異なっています。中国一線・新一線という都市部では少子化が始まっており、これからの経済発展を支える人口ボーナスが消失することが懸念されています。このような背景から、人口が多くこれからの成長余地がある2・3線都市が次の学生募集の拠点として注目を集めています。

 

■保護者コミュニティの構築及び活用で今後の日本留学の需要と期待

コロナ禍で保護者たちが海外留学の安全性に対する心配をしているものの、中国の高考(大学受験)の激しい競争や今後就職のことなど長期的な成長性を考え、経済的な余裕がある家庭は子供を海外へ留学させる選択肢として考えることが多く、日本語学校として、今から在校生の保護者向けコミュニティの構築を始め、決裁権のある保護者やサービスの利用者である留学生の悩みを解決ながら、満足度を上げることで、今後口コミによる学生直接募集も期待できると考えています。

 

ー本件についてのお問い合わせー

■株式会社Lincについて

Lincではインバウンド・タレントの「日本に来て良かった」を最大化させることで多様性と包容力溢れる社会の実現というビジョンを掲げております。少子高齢化という、抗えない大きな波が押し寄せてくる日本において、優秀なインバウンド・タレントの増加は日本という国の持続的発展に必要不可欠だと我々は確信しています。そのために私たちはお客様のニーズに応えるべく、常にユーザーである学生や日本語学校をサポートすることによって信頼関係を構築してまいりました。またLincはこれまで投資家から累計2億円近くの資金調達を完了しており、この話題が日本経済新聞にも掲載されました。